税理士試験に合格するためには、会計科目2科目(簿記論、財務諸表論)と税法科目3科目の合格が必要です。税法の中には、実務で必ずと言っていいほどよく使う科目と、ほとんど使わない科目があります。実務でよく使う科目はボリュームが多く、勉強量もより多く必要と言われています。ボリュームの少ない科目は、学習範囲が狭く、一見勉強の負担が軽そうに思えます。
税法の科目選択はどうすればよいか、というのは税理士受験生のおおきな悩みごとの一つです。人それぞれ考え方があるとは思いますが、私は実務で使う科目を受験すべきと考えています。
税理士試験での選択科目
税法の種類
税法は全部で9科目(下記参照)あり、その中から3科目選択する必要があります。そして、その3科目には法人税法か所得税法のいずれかが含まれなければなりません。
- 法人税法(選択必修)
- 所得税法(選択必修)
- 相続税法
- 消費税法
- 事業税
- 住民税
- 固定資産税
- 国税徴収法
- 酒税
税法の税理士試験での特徴と実務との関連
もっとも勉強時間が必要と言われているのが、法人税法と所得税法。選択必修の科目であるため、難易度も最も高いと思われています。
その次にボリュームが多いと言われているのが、相続税法。少子高齢化が進む中、平成27年1月1日からは相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられ、今後需要が高まるものと想定されます。
そして、実務上、最も使われる科目が消費税。法人であっても、個人であっても、事業者であれば消費税と無縁でいられることは不可能です。
そのほかの5科目は学習すべきボリュームが少ないいわゆるミニ税法と呼ばれるものになります。実務との関連では、事業税、住民税に関しては取り扱う頻度は高いものの、必要とされる知識は多くないため、税理士試験で選択したからといって実務でアドバンテージがあるとは言えないでしょう。
固定資産税は賦課課税ですので、実務で使うことはめったにないでしょう。ただ、最近は市町村の固定資産税の担当者が固定資産税の計算が間違っていたということが発覚していますので、「固定資産税適正化」のコンサルティングというニッチなサービスで勝負するというのはありでしょう。
国税徴収法は、私は実務で使ったことはありません。そして、今後も使わないで済めばよいな、と思っています。
酒税も、実務では使ったことはありません。こちらはその専門の方がいらっしゃるので、一般的な税理士にとっては扱うことがない税法といえるでしょう。
税法選択のポイント
実務で使う科目がお勧め!
私の個人的な体験で言えば、実務で使う科目を勉強するのがお勧めです。私の合格科目は、合格した順番に下記の通りとなります。
- 消費税法
- 法人税法
- 所得税法
消費税法を勉強していた時、同時に固定資産税を勉強していたことがありました。少ない学習時間で税理士試験に合格したいという思いで固定資産税を選択したのですが、どうも勉強に身が入りませんでした。
賦課課税だから合格しても使わないんだよな。だから、勉強も他の科目の後でいいかな。
こう思いつつ勉強をしていると、だんだん勉強しなくなってしまいます。税理士試験は科目合格制ですから、全科目満遍なく勉強してしまうと、全科目共倒れというリスクがあります。そして、結局、固定資産税は断念することにしました。
そして、法人税法を勉強しているときに同時に勉強したのが事業税でした。事業税は法人税法と親和性があるから勉強しやすいとの前評判もあり、法人税法と同時並行で学習しました。しかし、これもやはり勉強しなくなってしまいました。
- 社会人でありつつも2科目勉強するというのは、やはり共倒れのリスクが高い
- 選択必修の法人税法の合格を優先させたい
- 個人事業税となると法人税との親和性がなくモチベーションが低下
結局、事業税についても断念することとなりました。
私の場合、受験と割り切って勉強するということが出来ないタイプだったので、実務での使用頻度の高い消費税法、法人税法、所得税法を選ぶ結果となりました。
法人税法と所得税法の両方を勉強するのは面白い
私が最後に選んだ科目は、所得税法でした。すでに法人税法を合格しているので、ボリュームが多く、選択必修である所得税法を選ぶ必要はありません。しかし、結果として所得税法を選んだのは正解でした。所得税法は法人税法とも親和性があり、法人税法の受験経験があれば、その経験がない人に比べて理解が早く、かつ、楽しんで勉強できると思います。
- 法人税法の取扱いと所得税法の事業所得の取扱いの違い
- 法人税法の圧縮記帳と所得税法の譲渡所得の特例の類似点
こういったところを意識しながら勉強すると、何となく課税の考え方の法人と個人の違いや、課税政策としての法人税と所得税の一貫性などが理解できた気がして、法人税法と所得税法の両方を選択してよかった!と感じます。
税理士試験で選んだ税法科目が実務で役にたったこと
Big4税理士法人で役に立ったこと
私が税理士としてキャリアを積んだのが、世界4大国際会計事務所の系列の税理士法人でした。そして、そこでの5年のキャリアのうち約4年間は外資系企業や日系上場企業に対する税務コンプライアンス(確定申告書の作成、タックスレビュー(系列監査法人からの依頼による法人税等の妥当性の確認)など)を行う部署に属していました。
当然、クライアントは法人ですから、法人税、消費税が仕事の大半です。税理士試験では勉強するものの、中小企業相手ではあまり目にすることのない国際税務(外国税額控除、タックスヘイブン税制、過少資本税制)、組織再編税制(合併、会社分割、株式交換など)、連結納税などを経験することができ、税理士試験で学んだことを存分に発揮する機会に恵まれました。
消費税についても、金融や不動産を営んでいるクライアントについては、課税売上割合が95%未満で個別対応方式の仕入税額控除の適用していることがあったので、勉強したことを生かすことができました。
所得税法はというと、うーん…。Big4税理士法人ではあまり役に立たないかも!?と思われがちですが、そうでもなかったです。
特に役に立ったのが非居住者・外国法人に対する源泉徴収義務です。非居住者・外国法人の恒久的施設(PE)の有無によって源泉徴収事務の取扱いが変わることや、所得税法上では源泉徴収しなければならないケースであっても、租税条約の届出書を提出することにより、源泉徴収税額の減免や免除があるといったことにすんなりと馴染むことができました。
また、私が断念した事業税は、Big4税理士法人で実務を行っている方にとっては、取り組みやすい科目と言えます。資本金の額が1億円を超える場合に外形標準課税の適用があるのですが、そもそも資本金の額が1億円を超える会社はそう多くはありません。しかし、Big4の税理士法人では、外形標準課税の適用のあるクライアント数が多く、事業税の勉強が大いに役に立ちます。また逆も言え、普段から外形標準課税の実務を行っているBig4税理士法人でのスタッフは、事業税の合格率が高いようです(統計をとったわけでもなく、個人的な印象ですが)。
独立後に役に立つ所得税法
独立してから必ず必要となるのが所得税法です。独立すると、まず、自分の所得税確定申告を行わなければなりません(初めから税理士法人を起ち上げるという方は例外ですが)。法人税の知識しかないと、健康診断の費用をうっかりと事業所得の経費にしてしまうという間違いを起こしかねません。
所得税の確定申告は、税理士業界の一年での一大イベントですから、税理士会の支部によっては、支部が行う確定申告無料相談会の相談員が勝手に割り振られていたりもします。国税局の電話相談員も普段は税務署職員で賄っているものを、確定申告のシーズンに限っては税理士を大量に動員して何とか膨大な相談電話をさばいています(それでも待ち時間が長いこともあるようで、電話がつながった瞬間に「どれだけ待たせるんだ!」と怒られたりもします)。
法人をメインに仕事をしているとは言っても、税理士である以上、必要最低限の所得税の知識がないと仕事で苦労してしまいます。
【私の独断と偏見】税理士試験の税法選択のまとめ
法人向けの仕事を実務の中心とされる方
法人向けの仕事を実務の中心とする場合には、下記のいずれかの科目選択がお勧めです。
- 法人税法、消費税法、所得税法
- 法人税法、消費税法、事業税
法人税法、消費税法の基本的な知識は実務では必須です。それに加えて、所得税法を勉強するか、事業税を勉強するかのいずれかが望ましいと考えています。
法人クライアントでも源泉徴収事務の知識が必要ですし、独立を考えているのであれば、所得税法の基礎知識は持つべきです。
事業税は、中堅規模以上の法人をクライアントに持つのであれば外形標準課税や分割基準、中小零細企業をクライアントに持つのであれば個人事業税の知識が実務で生きるでしょう。
資産税の仕事を実務の中心とされる方
私のお勧めは、下記のいずれかです。
- 所得税法、相続税法、法人税法
- 所得税法、相続税法、消費税法
所得税法、相続税法は必須として、あと残り一つを何にするかです。
資産税に特化しているから、とは言いつつも、税理士として法人税や消費税の基礎知識はしっかりと持っていたいものです。固定資産税や住民税を選択するという手もありですが、固定資産税や個人住民税で申告が必要になることがあまりない(あったとしても税理士報酬を十分に頂ける仕事ではない)ということを考えると、私のように「試験は試験で合格すればいいから」と割り切ることのできないタイプにとっては向かないでしょう。
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【編集後記】
日曜日に桜文鳥を購入し、我が家に2匹目の鳥がやってきました(一匹目はオカメインコ)。ここ2週間ほど、小5の長女が「文鳥買おうよ」としつこくねだっていました。かれこれ100回以上言われたのではないか?と思うほど。それに対して、小1の二女も長女と一緒に文鳥が欲しいと言っていたのですが、日曜日に改めて聞いてみると「買わなくていい」と。ここまでずっと買うのを渋っていた私を見て、「本当は欲しいんだけど、パパが買いたくないのなら、買わなくてもいいんだ」とのこと。その言葉に心が動き、ついつい桜文鳥を購入。
そして、一番喜んでいるのがうちの妻です(#^.^#)
【週末の一日一新】
桜文鳥
三田獅子丸
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