税理士は会社員時代と収入が同じだったら独立しないほうがいいのか?


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独立後、税理士受験生や勤務税理士に「収入が同じでも独立してよかったと思えますか?」ということをよく聞かれます。私の答えは「収入が同じであれば独立したほうがいい」です。多少減ったとしても、独立の味を知ったら、生活に支障を及ぼさない限り、独立は辞めたくないとさえ思います。

そもそも収入が同じというのはどういうこと?

そもそも、独立前と独立後の収入が同じってどういうことなのでしょうか。考えられるのは次の2つのパターンです。

  1. 独立前の給料=独立後の売上
  2. 独立前の給料=独立後の利益(法人化している場合は給料)

収益・費用(収入・支出)を簡単な図に表すと以下の通りです。

スライド1

一般的に社歴の長い大手企業に勤務していると売上は安定、経費も安定、給与も安定といった具合になります。
私が独立直前に勤めていた会社は、この部類の会社でしたので、安定して平均的な会社員よりはやや高め(中間層の中の上程度であり、富裕層とは程遠い)でした。

独立した時に収入が独立前と同じといえる水準は、上記2の独立後の利益(給料)が独立前の給料と同じということです。そう考えると、売上(収入)については自分の給料と給料以外の経費の合計額は稼がないといけません。

給料をもらっていた時に時給5,000円程度だったとしたら、独立後に1時間につき5,000円の請求になっていたら経費が賄えずに会社員時代よりも減収となってしまうので注意です。

しかし、質問者の意図としては、上記1の「独立前の給料=独立後の売上」というイメージの場合のほうが多いのではないでしょうか。その場合はどうかというと、個人事業主を前提として考えた場合、独立後の利益を会社員時代の給与所得と同等になるように経費を抑え込めば、会社員時代と同等の手取りになるといえます。
下の図でいうと、会社員時代の給与所得控除と独立後の経費が同等であれば、同じ収入を維持できるのではないかということです。

20221102ブログ用

収入面から考える独立のメリット

独立した場合、収入は安定しませんが、自分の努力(と多少の能力)次第でいくらでも伸ばす余地はあります。ある意味、青天井といってもいいでしょう。

売上を大きく伸ばしている方はそのために多くの時間を割いてプライベートを犠牲にしていたり、多額の先行投資をしていたり、借入が多かったりということが少なくありません。

プライベートを大事にしたい、先行投資が不安だ、借入は必要最小限にとなると、そう簡単には売上は伸ばせません。

それに対して、比較的簡単に調整ができるのが経費です(もちろん、仕事に関係のないものは経費にできないという前提はありますが)。

税理士であれば比較的簡単に一人でも運営できますので、ひとり税理士として生きていくのであれば事務所は必要ありません(私のように5人家族で東京居住だと住宅事情(仕事部屋が作れない)で事務所が必要になる場合もありますが…)。家で仕事ができないけれど事務所家賃は高すぎるというのであれば、レンタルオフィスという手もあります(税理士の場合、シェアオフィスはダメです。情報漏洩リスクもありますし)。

従業員を採用するかという点についても、採用しないという選択肢もあれば、社員にするかパートアルバイトで賄うかという選択肢もあります。

会計ソフト・税務ソフトもTKC全国会に入って多額の投資をするという選択もあれば、必要な都度、会計ソフト、税務ソフトを書いたしていくということもできます。

交際費も飲み会営業でたくさん使うという手もあれば、飲み会営業はしないという選択もできます。

他人から見た独立前の収入と独立後の収入が同じというのは上記1の「独立前の給料=独立後の売上」というイメージを持たれていることが多いのですが、実生活を考えると、独立した本人としては上記2の独立後の利益(給料)が独立前の給料と同じ水準かどうかが大事です。ただ、それに関しては、経費を調整することで自分でコントロールできますので、いかようにもできるのです。

独立のデメリット

独立の目的がもっと稼ぎたいという方にとっては、上記で述べたような小さい話はどうでもいいでしょう。独立後の収入が独立前の給与と同じ程度だったら、独立しても意味ないじゃんと思うのでしょう。そういう場合、下記の独立のデメリットを実感することになります。

  • 自分で何でも決めないといけない
  • 全部自分でやらないといけない(従業員を採用しても教育しなければいけません。従業員の仕事ぶりをチェックしてミスがあったら直してあげないといけません。そして、小規模になるので会社員時代の同僚と同程度の能力を持った人の採用は難しいので、会社員時代の部下以上に丁寧に優しく面倒見てあげないと辞めちゃいます)
  • 会社員時代はわからないことは上司や同僚に相談できたけど、独立後は相談できる相手がいない(税理士の会員相談室の電話相談で税法のことは聞けますが、自分でしっかり調べてから電話すると、それ以上の情報が得られないことが多いです。)
  • 小規模だとみんなでワイワイ楽しくできなくて寂しい(仕事帰りに飲みに行く同僚がいない、社内イベントがない)

収入を増やすことが目的で独立し、収入が同程度だった場合の独立のデメリットに耐えられないというのであれば、独立はお勧めできません。

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私の場合は、独立することで結果として会社員時代よりも収入は増えましたが、劇的に増えて富裕層の仲間入りをしたというわけではないので、収入を激増したいという方にとっては成功例ではないようにみえるでしょう。

ただ、私自身は独立してよかったと思っています。会社員であれば基本的に会社が決めたことに従って行動することになりますが、独立するとすべて自分で決めることができます。

経費も自由に決めることができますし、仕事量を調整することもできますので、プライベートを充実させたいと思えば売上を減らして家族との時間を大事にするという選択もありです。

もちろん、独立するとすべてが自己責任であり、会社が守ってくれるということはありません。

その責任の重さというのはありますが、自由度の高さがあり、嫌なことはやらなくてよく、自分が好きなことを仕事にして楽しく人生を送ることができる独立は、私にとって最善の選択であったと考えています。

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【編集後記】
しばらくブログを休んでいましたが、継続したいという気持ちはずっと持ち続けていました。タイムマネジメントが上手く行っていない状況が続いていましたが、夏頃から時間の確保ができるようになってきたので、ぼちぼちとブログを書けるようになるのではと思っています。一度止めてしまうと再開するのが難しいという心理的な壁があるのですが、それを今日乗り越えました(笑)

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※この記事は、投稿日現在の状況、法令に基づいて書いています。

また、ブログの内容等に関する質問は、受け付けておりませんのでご了承ください。

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