起業申請、ネットで完結すると創業支援として行う税務手続きはなくなる?

2016年10月26日


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本日の日経新聞によると、政府は2019年から会社設立の申請手続きをインターネット上で完結することを目指すとのことです。つまり、インターネット上で法務局に会社設立の申請をすると、税務署にも法人設立届出書が提出されるようになるということです。これで、創業支援の会計事務所のメニューの一つが消えることになるかもしれません。

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コンサルティング不要、誰でも簡単に作れて提出できる届出書・申請書

会社の設立手続きをインターネット上で完結するとなると、法務局と税務署とのオンラインでの情報共有により「法人設立届出書」については税務署に提出する必要がなくなるでしょう。「法人設立届出書」の記載事項や添付書類は、会社設立時の登記事項や定款の内容で全てカバーできますので、現状の手続き自体が非効率ということなのでしょう。

会社設立時に必ず提出すべき提出書類としては、他に「青色申告の承認申請書」、「給与支払事務所等の開設届出書」、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」(従業員10人未満の場合)があります。「給与支払事務所等の開設届出書」に関しては、出す、出さないの選択肢はありませんから、こちらについてもオンラインでの情報共有により提出不要となってもらいたいものです。

「青色申告の承認申請書」や「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」は、選択制ではあるものの、申請書自体の記載は難しくなく、申請したからと言って不利になることはないので、オンライン手続きの対象になってもいいのではないか?とも思います。

従業員10人未満の小さな会社を作る時の税務上の手続き

それでも創業支援として税理士と相談したほうがよいこと

起業申請がネットで完結してしまえば、税務手続きは自分で簡単に全部できるようになるかもしれません。ただ、それでも、創業に当たっては税理士に相談したほうがよいことがあります。

個人事業とするか会社を設立するか?

そもそも、会社を設立する必要があるかどうか、検討する必要があります。ビジネス上、法人組織でないとお客様と取引できないということであれば会社の設立は必須でしょうが、起業するのに必ず会社が必要なわけではありません。個人事業として行うべきか、法人を設立するべきか、税金や社会保険料の負担を比較して有利不利を判定する必要があります。

税金などの負担の面から考える会社設立のメリット・デメリット

会社の資本金はいくらにするか?

会社の資本金は、税金の多寡に大いに影響を与えます。例えば、以下のものがあげられます。

  • 会社の設立時に資本金の金額の0.7%相当額(株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円)の登録免許税が必要
  • 資本金を1,000万円以上にすると設立初年度から消費税の納税義務が発生する課税事業者に該当
  • 住民税のうち均等割の金額については、資本金の額が税額の決定要因
  • 資本金が1億円を超えると中小企業の優遇税制の適用が受けられない
  • 資本金が1億円超だと外形標準課税の対象

入札などで資本金が最低いくら必要といったこともありますので、ビジネス上の要請、資本政策、税金の影響を総合的に勘案して決定する必要があります。

消費税は課税事業者を選択するか?しないか?

資本金が1,000万円未満の場合、設立2年目まではその事業年度の上半期の給与総額が1,000万円を超えなければ、消費税の納税義務はありません(この納税義務のない事業者を免税事業者といいます)。一般的には売上に係る消費税が仕入れに係る消費税よりも多いのが普通ですから、特段消費税の手続きは何も行わないでしょう。

ただし、資本金が1,000万円でも敢えて消費税の課税事業者となったほうがよい場合があります。それは、下記のケースです。

  • 輸出ビジネスを行っている場合
  • 不動産事業などで初期投資が多額である場合

消費税の納税の仕組みを簡単に説明すると、売上時に預かった消費税から仕入れ時に支払った消費税を差し引いた残りの金額を課税事業者が納税するというものです。逆に、課税事業者の売上時に預かった消費税よりも仕入れ時に支払った消費税のほうが多い場合、その事業者は消費税の確定申告をすることにより、消費税の還付を受けることが可能です。

輸出ビジネスの場合、輸出に関しては消費税を預かることはありませんので、仕入れに関連して支払った消費税の還付を受けることが可能です。

初期投資が多額である場合は、初期に仕入れに関する消費税を多額に支払いますので、会社設立時から課税事業者を選択したほうが有利な場合があります。事業計画をきちんと立てて、有利不利を判定して課税事業者の選択の有無を判断しましょう。

まとめ

ただ単に手続きを代行するという方向性で税理士のビジネスを行おうと考えた場合、ネットで手続きが便利になればなるほど仕事は失われていきます。しかし、複数の選択肢があり、その有利不利などのコンサルティングができれば、便利になることは恐れるに足りません。

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【編集後記】

今日の朝、妻が包丁で指を切りました。事務所に行くのを急きょ取りやめ、妻が病院に行っている間、8か月の長男と一緒に留守番。自宅で仕事(原稿の執筆)をしつつ、家事と育児にも励みました。

【昨日の一日一新】

夢をかなえるゾウ

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