【2017年度税制改正案】所得拡大促進税制の減税幅拡大で中小企業の賃上げは実現するのか?

平成29年度税制改正
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昨日の日経新聞の夕刊によると、2017年度税制改正で、「所得拡大促進税制」の見直しにより、賃上げを中小企業にも行き渡らせる環境を整えるとのことです。

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※ 『中小企業賃上げ 減税幅拡大』についての最新記事はこちらです(2016年12月1日追記)。

【2017年度税制改正案】中小企業の賃上げ促進減税の内容が判明
本日(2017年12月1日)の日本経済新聞の一面は、『賃上げ中小 減税拡大 法人税増加分の22%』でした。11/16のブログでも取り上げましたが、本日の記事で内容が明らかになってきましたので、どのように改正される予定なのか、まとめてみました...

所得拡大促進税制とは

給与が増えた分の10%を法人税額(所得税額)から控除できる制度

所得拡大促進税制とは、平成25年度税制改正において、消費が低迷している状況下、企業の賃上げを促進し、労働分配率を拡大するために設けられた制度です。

基準となる年度と比較して増えた分の給与の10%相当額を法人税額(所得税額)から控除できる制度です。控除額はその控除前の法人税額(所得税額)の10%が限度となっていますが、資本金1億円以下で従業員数1,000人未満などの要件を満たす中小企業の場合には20%が限度となります。

今夏の税制改正要望では、経済産業省は、中小企業の賃上げを促進するため、中小企業に限り、法人税額(所得税額)から控除できる金額を増えた分の給与の10%相当額から20%に引き上げることを要望していました。財務省としては、それを鵜呑みにするのではなく、メリハリを利かせた形で、来月の税制改正大綱へ向けて調整するとのことです。

現状の適用期限は2018年3月末までに開始する事業年度までです。適用期間についても延長されるのか、今後の動向が気になるところです。

適用を受けるためには?

適用を受けるためには、以下の要件のすべてを満たす必要があります。

  • その事業年度の従業員への給与が基準年度の従業員への給与より一定割合(増加促進割合)以上増加していること
  • その事業年度の従業員への給与が前事業年度の従業員への給与を上回っていること
  • その事業年度において継続的に働いている従業員1人あたりの平均給与が前事業年度における同様の平均給与を上回っていること

(注)経済産業省や国税庁の文章だと専門用語が多いので、厳密性は度外視して平易に要件を書いてみました。

なお、増加促進割合は、下表のとおりです。

2016-11-16 (1)

出所:経済産業省のホームページより

法人の役員または個人事業主の親族への給与を増やしてもOK?

この制度で目的としているのは、従業員の賃上げです。そのため、役員や個人事業主の親族へ給与は、その親族がたとえ従業員であったとしても対象外となります。従業員である奥さんや子供の給与だけを上げて節税しよう、なんてことはできませんのでご注意を。

助成金を受け取った時は?

政府等から雇用のための助成金を受け取った場合には、その金額分相当の給与は所得拡大促進税制の対象外になります。

賃上げを阻むもの

では、税制で賃上げをバックアップするからといって、賃上げは実現できるのでしょうか。そもそも、日本の実質賃金が低下している要因は何なのか、世間で言われていることで会計事務所に当てはまりそうなものをピックアップしてみました。

技術革新~手書きから会計ソフトへ~

技術革新でその業務の価値が低下している業務と言えば、記帳代行です。PC普及前は、手書きで入金伝票、出金伝票、振替伝票を作って、総勘定元帳に転記し、試算表を作るというのをそろばんや電卓でやっていました。

PCが普及すると、会計ソフトへ仕訳を入力すれば自動で総勘定元帳、試算表が作成されるようになりました。

そして、今や、クラウド会計のソフトを使えば、インターネットバンキングを利用しての預貯金の明細、クレジットカードの利用明細、SuicaやPASMOでの利用状況も会計ソフトで取り込むことが可能です。

会計ソフトに付属している請求書発行システムや会計ソフトに連動する請求書発行アプリを使えば、請求書の発行と同時に会計ソフトで売上が計上されます。飲食店などではレジと会計ソフトを連動させるということもできます。

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FreeeやMISOCAで請求書を発行して自動で経理
freeeやMISOCAを使って請求書を発行すると、自動で会計システムに売上が計上されます。 会計Freeeで請求書を発行して自動で経理 「取引」→「請求書」を開きます。 下記の画面の必要項目を入力します。「取引の項目(勘定科目・税区分など...

このような状況ですから、記帳代行の単価は当然のように下がっていくことになるのです。

新興国との競争

製造業などでは、グローバリゼーションにより新興国との価格競争が生じ賃金が抑制されるといったことが生じています。会計事務所はというと、アメリカでは賃金の安いインドへの業務委託が増加するといったことが起きているようです。では日本はというと、日本語の特殊性のため、守られているといったところでしょうか。英語でしたら対応できてしまう国がたくさんありますが、日本語を扱う国は日本だけですからね。

まとめ

所得拡大促進税制は、賃上げを検討している会社にとってはありがたいものです。ただ、この措置はあくまでも一時的なものですし、そもそも業績が良くない限り、賃上げは難しいものです。

大企業は円安の影響などで業績が好調のようですが、まずは中小企業にとっても賃上げが可能になるような経済環境が整ってもらいたいものです。

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【編集後記】

ブログを開始してから今日で3か月が経ちました。平日毎日継続して書くというのは、結構大変です。23時台に更新するということが多いので、まずはそこを改善しなくては…。

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※この記事は、投稿日現在の状況、法令に基づいて書いています。

また、ブログの内容等に関する質問は、受け付けておりませんのでご了承ください。

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