一昨日(2016年11月13日)の日経新聞の一面の記事によると、政府・与党は中小企業の年800万円以下の所得に対する税率を15%とする特例措置を2年延長する方針を固めたとのことです。
現在の法人税率は何%?
2017年3月31日までに開始する事業年度の法人税率は、23.9%(2017年4月1日以後開始する事業年度は23.4%)です。ただし、資本金1億円以下の中小企業(資本金5億円以上の大企業の100%子会社などを除きます。)向けに特例が設けられており、年800万円以下の所得に対しては15%となっています。この15%というのは2017年3月31日までに開始する事業年度までの特例であり、その特例が期限切れとなると19%になってしまいます。2017年度税制改正では、この特例を2年間延長するとのことです。
この特例の延長が実現した場合、資本金1億円の中小企業の所得が1,000万円の場合の2017年4月以降開始事業年度の法人税は、下記の通りとなります。
(1) 800万円以下の所得に対する法人税
800万円×15%=120万円
(2) 800万円超の部分の所得に対する法人税
(1,000万円ー800万円)×23.4%=46.8万円
(3) (1)と(2)の合計
120万円+46.8万円=166.8万円
中小企業の所得(利益)に対する税率は15%でOK?
新聞の記事だけ読むと、「そっか。年800万円以下の所得の中小企業は税率が15%だから、100万円所得が出たら税金は15万円だな」と思ってしまいそうですが、そうではありません。
所得(利益)に対する税金は地方法人税、住民税、事業税がある
法人の所得(利益)に対する税金は、法人税の他にも、下記の4つがあります。
- 地方法人税
- 住民税(所得割)
- 事業税(所得割)
地方法人税とは、住民税(所得割)の税収の地域間格差を是正するために導入されたものであり、税額は基準法人税額に4.4%を乗じて計算します。
法人に対する住民税は、その法人の事務所が所在する自治体に納めるもので、道府県民税と市町村民税があります。道府県民税、市町村民税の課税の方法は、次の2通りです。
- 所得割:法人の所得(利益)に対して課税
- 均等割:法人の資本金等の額の規模と従業員数(50人以下 or 50人超)に応じて課税
所得割の標準税率は、道府県民税3.2%、市町村民税9.7%です(東京都の場合、都民税12.9%)。
事業税とは、都道府県から行政サービスの提供を受けているとのことで、その対価として負担するという考え方の税金です。資本金1億円を超えると外形標準課税(資本の規模、給与の規模、支払賃借料の規模、支払利子の規模に応じて負担する税金)が課されますが、資本金1億円以下の場合には所得に対してのみ課税されます。
事業税の標準税率は、次の通りです(地方法人特別税を含みます)。
<軽減税率適用法人>
年400万円以下の所得:3.4%
年400万円超年800万円以下の所得:5.1%
年800円超の所得:6.7%
<軽減税率不適用法人>
6.7%
※ 軽減税率不適用法人とは、3以上の都道府県において事務所等を設けて事業を行う法人で、資本金の額が1,000万円以上のものをいいます。
100万円利益が出ている中小企業の利益に対する税金はいくら?
上記の通り、法人税以外にも所得(利益)に対する税金がありますので、100万円の利益が出た中小企業の利益に対する税金は15万円では済みません。
利益に係る税金の額は、次の通りになります(東京23区の場合)。
<法人税>
100万円×15%=150,000円
<地方法人特別税>
15万円×4.4%=6,600円
<都民税>
15万円×12.9%=19,300円
<事業税>
100万円×3.4%=34,000円
つまり、トータルで209,900円かかります。つまり、中小企業でも約21%の税金がかかるのです(法人事業税は損金算入となりますので実効税率はこれよりも低いですが)。
これに住民税均等割が最低7万円かかりますから、法人税、住民税、事業税の税金の合計は最低でも279,900円となります。
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【編集後記】
サッカー日本代表、サウジアラビアに勝ちました!これで勝ち点がサウジアラビアと並びましたね。
【昨日の一日一新】
神楽坂のKAZUにて前職の同僚と焼肉を堪能
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