【海外取引を行う場合の源泉所得税】外国に住んでいる作家やデザイナーなどへ原稿料などの報酬を支払った場合

国際税務
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源泉徴収の義務のある個人や法人が日本に居住している個人に対して、原稿料やデザイン料などの報酬を支払った場合には、報酬の10.21%相当の所得税の源泉徴収が必要です。

それでは、外国に住んでいる作家やデザイナーに原稿料などの報酬を支払った場合は、どうすればよいのでしょうか。

同じように、報酬の10.21%の所得税の源泉徴収でよいのでしょうか。

外国に住んでいる作家やデザイナーなどへ原稿料などの報酬を支払った場合の源泉所得税

原則、20.42%の所得税の源泉徴収が必要

源泉徴収義務のある個人や法人が外国に住んでいる作家やデザイナーに原稿料などの報酬を支払った場合、原則として、その報酬の20.42%の所得税を源泉徴収し、報酬の支払いの日の翌月10日までに所轄の税務署へ納付しなければなりません。

海外に住んでいる個人(非居住者と呼びます。)や外国法人が国内源泉所得と呼ばれる日本での収入を得たときには、その日本での収入に応じた所得税を日本で納税しなければなりません。

しかし、日本に拠点のない非居住者や外国法人に対して課税をするというのは、徴収する側の国にとって、簡単なことではありません。

日本に住んでいる方と比較すると税金を徴収できないリスクが高いのです。

そこで、源泉徴収義務者に対して日本に住んでいる方への原稿料などよりも高い20.42%を源泉徴収の義務を課しているのです。

租税条約により税率の軽減や免除があることも!

ただし、非居住者や外国法人の居住国が日本との間で租税条約を結んでいる場合、この20.42%の税率が軽減されたり、免除されたりすることがあります。

ちなみに、租税条約とは、主に2か国間で「二重課税の回避」を目的として締結されている条約をいいます。

日本は、70の条約等を締結しており、123か国・地域でその適用があります(2018年3月1日現在、財務省HPより)。

たとえば、海外に住む方が日本の個人事業主や法人から報酬をもらっている場合、その住んでいる国で所得税などの税金が発生します。

その一方、日本でも原則として報酬の20.42%相当の所得税が源泉徴収されてしまいます。

つまり、居住国と日本との双方から税金を取られてしまい、過度な税負担となってしまう二重課税を回避するため、租税条約では20.42%よりも低い税率での課税で済んだり、課税が免除されたりするよう規定しているのです。

原稿料などの著作権の使用料についての源泉徴収については、租税条約により、相手先ごとに下記のように減免されるのです。

<租税条約による減免の例>

  • 韓国 12%
  • シンガポール 10%
  • 中国 10%
  • マレーシア 10%
  • アメリカ 免税
  • イギリス 免税

租税条約による減免を受ける時の手続

租税条約に関する届出書の提出が必要

本来20.42%の税率の源泉所得税について、租税条約に基づいて税率を軽減したり、税額の免除を受けたりするためには、税務署へ租税条約に関する届出書をその報酬の支払の日の前日まで税務署へ提出する必要があります。

租税条約に関する届出書は、下記の国税庁のホームページから書式をPDFにてダウンロードすることが出来ます。

A3 源泉所得税(租税条約等)関係|国税庁
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この租税条約に関する届出書は、

  1. 報酬の支払いを受ける者(非居住者、外国法人)が作成し、
  2. 報酬の支払者を経由して税務署へ提出

という流れです。

届出書のフォーマットは、日本語と英語が併記されていますので、外国人の方であっても作成が可能です(英語が読めればですが)。

租税条約の適用を受ける場合には、まずは、租税条約の届出書を国税庁ホームページからダウンロードし、報酬の受取人へメールで送って届出書を作成してもらいましょう。

届出書の記載が終わりましたら、その記載した届出書を送ってもらい、内容を確認の上、税務署へ提出することになります。

特典条項に関する付表

租税条約の適用を受ける場合、下記のいずれかの国の居住者や外国法人への報酬については、租税条約に関する届出書に特典条項に関する付表を添付して税務署へ提出する必要があります

  • アメリカ
  • イギリス
  • フランス
  • オーストラリア
  • オランダ
  • スイス
  • ニュージーランド
  • スウェーデン
  • ドイツ
  • ラトビア

特典条項に関する付表は、以下の国税庁のホームページにフォーマットが用意されています。

A3-21 特典条項に関する付表(様式17)|国税庁

特典条項に関する付表には、居住者証明書を添付(もしくは報酬の支払者へ提示)が必要です。

租税条約に関する届出書の提出を忘れてしまった場合

非居住者に対する報酬について、租税条約の適用があることを失念していて、20.42%の源泉徴収をしていた場合、報酬の支払い後であっても納付後5年以内であれば、払いすぎていた源泉所得税の還付を受けることができます。

還付を受けるためには、下記の書類を税務署へ提出する必要があります。

非居住者又は外国法人への報酬に係る源泉徴収税額の納付手続

非居住者への源泉徴収税額の納付については、日本に住んでいる個人への報酬に係る納付書とは別のものを用います。

様式は、下記の国税庁のホームページのものになります。

https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/shotoku/gensen/080623/pdf/05.pdf

租税条約の適用により源泉所得税の減免を受けた場合には、「摘要」欄にそれぞれの区分ごとに人員、支払額及び税額を記載することになります。

なお、租税条約の適用により源泉所得税の徴収が免除され、納める税額がない場合についても、この納付書を税務署へ提出する必要がありますので注意しましょう。

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【編集後記】

今日は2歳の長男が40度の高熱を出してしまった影響もあり、自宅で子守をしつつ仕事をしていました。

子守と言っても、長男はAmazonのPrimeデーで購入したFire TV Stickでアニメばかり見てましたが(-_-;)

 

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