業務請負先や業務委託先への外注費が税務調査で給与認定を受けてしまったらどうなる?

2020年4月5日


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Alexas_Fotos / Pixabay

社員、契約社員、パート、アルバイトに対して支払うのが給与です。

それに対して、業務請負先や業務委託先に対しての支払いは、外注費として取り扱われます。

そして、業務請負先や業務委託先の中には、社員と同じように会社に常駐して働いている方がいます。

このように会社に常駐している方に対して支払う外注費は、税務調査により、実質的には給与とすべきものと判断された場合には、追加の税金の負担とそれに伴うペナルティーが発生してしまいます。

業務請負契約や業務委託契約のメリット

雇用契約や派遣契約に比べ、業務請負契約や業務委託契約は、次のようなメリットがあります。

  • 使用者としての責任が問われない(労務管理や安全管理を行う義務が使用者に生じない)
  • 社会保険料や労働保険料などの負担がない

ブラックな偽装請負ともなれば、

  • 労働法の縛りがないので、残業代が発生せず、いつでも契約の打ち切りができる
  • 派遣法で禁止されている仕事にも業務請負であれば派遣できる

などなど、ブラックな側面がいろいろと…。

特に、ブラックな業者では、従業員の無知を利用して、

  • 正社員だと思っていたら実は業務委託契約だった
  • もともと正社員だったが、気が付いたら業務委託先になっていた

とか言うことも・・・。

「転職先の会社で支払調書を渡されて、自分で確定申告するように言われたのだけど、どうすればいい?」

という声を聞くといたたまれない気持ちになります。

労働法などの働く方が最低限知っておくべき知識は、学校でちゃんと教えてから卒業させたほうがいいですよね。

税務調査で外注費が給与認定されてしまったら?

税務調査で外注費が給与認定されてしまうと、複数の税目で追徴課税が発生し、それぞれにペナルティーが課せられます。

源泉所得税

個人へ外注費を支払うときには、原稿料や講演料、ホステスなどへ支払う報酬などを除き、所得税の源泉徴収は行いません。

これに対して、従業員へ給与を支払う場合、その給与の金額や社会保険料の金額、扶養親族の人数などに応じて、所得税の源泉徴収を行います。

したがって、外注費が給与認定された場合には、所得税の源泉徴収漏れがあったということになります。

そして、納めるべき税額を納めていないということで、不納付加算税(税額の10%相当額)が課されます。

さらに、納付が遅れたということで次の割合で延滞税が課されます。

  • 納期限から2か月:年「7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合(2018年1月1日から12月31日までの場合、2.6%)
  • 納期限から2か月以降:年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%のいずれか低い割合(2018年1月1日から12月31日までの場合、8.9%)

消費税

事業者が納税する消費税の金額は、原則として、

「預かった消費税の額」-「支払った消費税の額」

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と計算します。

個人へ外注費を支払うときには、消費税を含めた金額を支払うことになります。

それに対して、従業員へ支払う給与に対しては、消費税は含まれていません。

例えば、外注費を1,080万円(税込)払っているのであれば、このうちの80万円は「支払った消費税」として納税する消費税の額から差し引くこととなります。

しかし、この1,080万円が外注費ではなく給与として認定されてしまった場合には、80万円部分が支払った消費税とは認められないこととなり、80万円が過少申告であったものとして追徴課税されることになります。

このように過少申告があった場合には、納付税額の10%~15%の過少申告加算税と延滞税が課されることとなります。

外形標準課税

資本金が1億円を超える法人の場合、給与、支払賃借料、支払利子などの規模に応じて外形標準課税と呼ばれる課税が発生します。

外形標準課税の対象となる報酬給与には、給与や派遣会社への派遣料が該当しますが、業務請負や業務委託は該当しません。

しかし、給与認定される業務請負や業務委託については、外形標準課税の対象となる報酬給与に含まれることとなります。

外形標準課税についても税務調査で給与認定を受けた場合には、追徴課税を受けることとなり、これに対する過少申告加算金や延滞金が発生します。

外注費が給与認定されないためには

支払う報酬が外注費となるのか、給与となるのかについては、昭和56年最高裁の判決で一定の基準が示されました。

その内容は、以下の通りです。

事業所得とは、⾃⼰の計算と危険において独⽴して営まれ、営利性、有償性を有し、
かつ反復継続して遂⾏する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から⽣ずる所得
をいい、これに対し、給与所得とは雇⽤契約⼜はこれに類する原因に基づき使⽤者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使⽤者から受ける給付をいう。なお、給与所得については、とりわけ、給与⽀給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務⼜は役務の提供があり、その対価として⽀給されるものであるかどうかが重視されなければならない。

こちらの内容について、以下4つに区分して簡記してみました。

これらの基準を総合的に勘案して、外注費でよいのか、それとも給与認定されるのか判断されることとなります。

自己の計算と危険において独立して営まれているか?

業務請負先、業務委託先が行った仕事の成果について責任を負うのは、業務請負先、業務委託先なのでしょうか。

仕事で必要なものについて、業務請負先や業務委託先が自分で用意しているのでしょうか。

外注先ということであれば、仕事の成果への責任を負うことになりますし、仕事で必要なものについては、基本的に、外注先が自ら用意するものです。

使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価か?

外注先へ依頼する業務内容は、契約に基づいて定められた一定の業務でしょうか。

会社に常駐する外注先の方に対して、社員と同じようにその場で上司が命令した仕事を何でもやってもらってはいないでしょうか。

外注先の仕事内容は、外注先がその業務ごとに請け負うか否か決めることができるものであり、会社の指揮系統下で業務命令を受けて行うものではありません。

空間的、時間的な拘束を受けているか?

外注先が働く場所や就業時間について拘束を受けていますでしょうか。

遅刻や早退などの勤務時間をタイムカードで管理して、仕事の成果ではなく、勤務時間をもって報酬を決めてはいないでしょうか。

継続的ないし断続的に労務または役務の提供があり、その対価として支給されるものか?

外注費の計算は、一定の報酬体系下の日給や時給で、勤務時間に基づいて定められたものになっていないでしょうか。

外注先であれば仕事の成果によって報酬は決められるべきものですので、基本的には、決まった場所での勤務時間や遅刻の有無などに左右される性質のものではありません。

まとめ

本来であれば、従業員として給与を支払うべきところを外注先にして使用者としての責任を回避して、社会保険や労働保険も軽減しようというのは、給与認定されてしまったときにペナルティーが生じてしまいます。

外注先として仕事を発注する場合には、

  • 勤務時間ではなく仕事の成果に応じて報酬を決める
  • 契約で定められた仕事以外を外注先にやらせない
  • 仕事で使う道具については外注先に任せる
  • 就業場所や就業時間といった拘束をしない

といったように、外注先としての実態を備えるようにしましょう。

もちろん、無知な労働者をだまして偽装請負をするというのはもっての外です。

税法だけでなく、刑事罰を受けることにもなりかねませんので、気を付けましょう。

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【編集後記】

独立以来、法人税の税務申告ソフトはJDLを利用していましたが、外国法人の確定申告に対応しておらず、今月から法人税の達人を導入しました。

コストパフォーマンスを考えるとJDLなのですが、平成28年4月1日以後開始事業年度の外国法人が使用する別表1の3に対応しておらず、やむを得ずの対応です。

JDLは会計ソフトも大幅値下げしており、独立間もない若手税理士の心を揺さぶっています。

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※この記事は、投稿日現在の状況、法令に基づいて書いています。

また、ブログの内容等に関する質問は、受け付けておりませんのでご了承ください。

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