会計監査を受けている会社であれば、数千万、場合によっては数億の監査報酬を支払っていることもあります。
金額のインパクトが大きいだけに、税金の取扱いにも注意が必要です。
監査報酬の会計上の処理
監査報酬はその金額が大きいため、分割払いで支払うことの多い費用です。
月次決算で費用計上を平準化したいということで、監査報酬を各月に按分して計上しているという経理を行っている企業は少なくありません。
そして、監査終了後に支払う監査報酬について、期末に未払計上するという処理もよく行われています。
例えば、2018年3月期の監査であれば、2018年3月期中にすべて費用化したいということで、監査終了後に支払う金額を2018年3月末に未払計上するといった具合です。
監査報酬の税金の取扱い
法人税の取扱い
法人税では、監査報酬のように販売費及び一般管理費に該当する費用については、債務が確定した時に損金に算入することとなっています。
それでは、監査終了後に支払う金額について、期末までに債務が確定しているといえるのでしょうか。
監査という業務のメインは、期末時に会社が作成する財務諸表の監査です。
すると、主な作業時期は、決算日後の3か月間です(特に、初めの1、2か月)。
つまり、監査終了後に支払う報酬については、役務提供が終わっていないのが明らかです。
そこで、会計上は費用としつつも、税務上は損金算入できないので、税務申告書上、調整を行うことになります。
2018年3月期の監査報酬を未払計上しているのであれば、2018年3月期については損金不算入の処理を行い、2019年3月期において損金算入することとなります。
元税務署長であり、税務調査官でもあった税理士の牧野義博氏の書籍によると、次のように書かれています。
<定期監査>
債務が履行されているので、損金としても問題ない
<決算内容の監査及びそれに基づく監査報告業務>
決算終了前後から始まり、期末時点ではまだ債務が発生していないので損金にはならない
消費税の取扱い
基本的には、法人税と消費税では、同じ取扱いをします。
つまり、法人税で損金にはならない未払計上した監査報酬は、消費税においても仮払消費税を認識することはできません。
そこで、監査報酬を未払計上する場合には、金額を税抜きとし、消費税を課税対象外として会計ソフトに入力するとスムーズに処理することが出来ます。
監査契約時にできること
監査法人では、その監査報酬が損金になる時期がいつになるかということは意識せずに契約書を作成するのが一般的です。
すると、定期監査と決算内容の監査及びそれに基づく監査報告業務の報酬の内訳がわからないとか、四半期決算に関する報酬なのか年次決算に関する報酬なのかわからず、どの金額を損金にすればよいかわからないといった問題が生じることがあります。
そこで、監査法人との契約時に税務上の損金算入額を明瞭にするため、監査報酬の内訳を契約書に記載してもらうとよいでしょう。
監査法人では、どの仕事に何時間かかるのかという計画を作成していますので、交渉次第では監査報酬の内訳を記載してもらうことが可能です。
期ズレの問題なのでそこまで気にしなくても・・・という声もあるのでしょうが、細かくきっちりとやりたいという経理担当者にとっては監査報酬の内訳の記載があると安心ですね。
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【編集後記】
最近、時間が足らないと思うことが多く、時間術に関する書籍を読み、それを実践しようと試みています。
成果が出たら、ブログ記事にする予定です。
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