相続税の節税を目的とした養子縁組は有効~2017年1月31日最高裁で確定~

2020年4月5日


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naobim / Pixabay

2017年1月31日、相続税の節税を目的とした養子縁組の有効性を巡って争われていた事案について、最高裁でその有効性を認める判決がでました。一審東京家裁で有効とされた判決でしたが、二審の東京高裁では無効とされ、最高裁の判断が注目されていました。

裁判の経緯

訴えを起こしたのは税務当局ではない

この記事のタイトルを見た時、相続税の節税のみを目的とした養子縁組が税務当局から否認されて追徴課税を受けてしまったのではないかと思っていましたが、そうではないようです。

裁判に至った経緯

裁判に至った経緯は、下図の通りです。

<被相続人が亡くなる前>

スライド1

長男は、税理士を伴って、父親に相続税の節税になると説いていたとのことです。そして、養子縁組により、長男の息子(亡くなった男性の孫)は長男の父親の子供となりました。

<長男の息子を養子縁組で被相続人の子供へ>

スライド2

男性が亡くなった時、養子縁組について訴えを起こしたのは、その男性の長女と次女です。おそらく、財産分与について、養子縁組をした長男の息子にも相続財産を分け与えることに納得できず、養子縁組の無効を主張して訴えを起こしたのでしょう。

結果は冒頭に述べた通りです。最高裁では例え養子縁組の目的が相続税の節税であっても、その養子縁組は有効であるとの判断を下しました。

相続の前に養子縁組を行った場合のメリット・デメリット

ところで、相続の前に養子縁組を行った場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

メリット

まず、メリットですが、以下のものがあります。

  • 相続税の基礎控除(非課税枠)の拡大
    相続税の基礎控除(非課税枠)は、以下の算式により算定します。
    3,000万円+600万円×相続人の数
    養子をすることで相続人の数が増えますので、非課税枠が広がります。
    なお、相続税法では、実子がいない場合には2人まで、実子がいる場合には1人までの養子が認められます。
  • 生命保険の非課税枠の拡大
    相続人一人につき500万円までの非課税枠がありますので、養子1人増えることで500万円分非課税枠が拡がります。
  • 死亡退職金の非課税枠の拡大
    生命保険の場合と同様、500万円分の非課税枠が拡がります。
  • 普通養子縁組の場合、子は実の親と養親の両方の相続権がある
    今回の裁判のケースで言えば、長男の息子は養子縁組により祖父母から財産を相続する権利が発生しますし、長男夫婦から財産を相続する権利も失われません。

デメリット

デメリットは、以下の通りです。

  • 遺産分割協議がまとまらず、争いの火種に
    今回の裁判がそうであったように、孫を養子とすることで節税することができても、孫が相続人になることで遺産の分割でもめてしまう可能性があります。
  • 相続税の額が2割加算される
    孫を養子縁組により子とした場合、相続税額が2割加算されてしまいます。

まとめ

今回の最高裁の判決により、相続税対策のための養子縁組が認められることとなり、今後は安心して(?)養子縁組による相続対策を行う方が増えるかもしれません。ただし、今回の裁判のように、いわゆる孫養子は兄弟間の揉め事になりかねません。

ただでさえ、もめることの多い相続です。養子縁組が節税に繋がることもありますが、それよりも肉親でもめることのないようにしたいものです。

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【編集後記】

昨日は朝から夕方まで税理士会関連の仕事をし、夜はメガネ税理士の新年会に参加しました。メガネをかけた税理士が参加資格(?)ということで、いつもはコンタクトの私もメガネで参加しました。

【昨日の一日一新】

やまや新橋店

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