【2017年度税制改正】法人税の確定申告期限の延長~申告期限を事業年度終了から半年後まで延長することも可能に~

2017年6月20日


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2017年度税制改正により、法人税の確定申告期限の延長の特例が拡大されました。法人税の確定申告期限は、原則、その事業年度終了の日の翌日から2月以内と規定されていますが、延長の特例を受けると、最大でその事業年度終了の日の翌日から6月以内までに申告期限を延長することができます。

法人の確定申告期限は?

【原則】事業年度終了の日の翌日から2月以内

法人税の確定申告期限は、事業年度終了の日の翌日から2月以内と規定されています。

ただし、確定申告期限の日が土日祝日に該当する場合には、これらの日の翌日が申告期限となります。

例えば、決算日が3月31日の場合、確定申告期限は原則として5月31日になります。

決算日が10月31日の場合には、12月31日は休日扱いとなり、1月4日が確定申告期限となります。ただし、1月4日が土曜日であれば、1月6日が申告期限になります。

【特例①】定時株主総会の開催を事業年度終了の日の翌日から3月以内としている場合

株式会社の場合、事業年度が終了したら、定時株主総会を開き、そこで計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)の承認を得る必要があります。その承認をもって、初めて、その事業年度の決算が確定することになります。

定時株主総会の開催は、定款で定められていることが一般的です。定款に事業年度終了の日の翌日から3月以内としている会社の場合、3月決算であれば6月末までに定時株主総会を開く必要があります。

株主総会が事業年度終了の日の翌日から3月以内と定めている会社の場合、気になるのが法人税の確定申告期限との兼ね合いです。法人税の申告期限の原則が事業年度終了の日の翌日から2月以内ですから、定時株主総会での決算の確定が法人税の確定申告期限後になってしまうということが危惧されます。

「決算確定前に、確定した決算に基づき確定申告をする」なんてできませんよね。

そこで、2017年度税制改正により、確定申告期限の延長の特例で次の規定が設けられました。

定款等又は特別の事情があることにより、今後、各事業年度終了の日の翌日から2月以内にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にある場合には、申告書の提出期限を1月間延長することができる

つまり、定款での定めに基づいて、定時株主総会を翌期の3月目(3月決算であれば6月)に開催する常況であれば、申告期限を事業年度終了の日の翌日から3月以内(3月決算であれば6月末)までに延長することが可能なのです。

2017年度税制改正前においても、この申告期限の延長は認められてはいましたが、2017年度税制改正により明文化されました。

【特例②】会計監査を受けている場合

会計監査を受けている会社の場合、通常、監査の関係上、決算は事業年度終了の日から2か月以内には確定しません。3月決算の場合には、4月下旬~5月上旬に決算発表を行い、6月上旬から下旬にかけて定時株主総会により決算が承認されます。3月決算の多い日本では6月最終週には大企業の株主総会が集中しており、問題視されています。

この6月最終週に株主総会が集中する原因の一つとして考えられるのが、法人税の確定申告期限でした。会社法上では定時株主総会の設定は柔軟に行うことが可能なのですが、2017年度税制改正前においては、会計監査を受けている会社の法人税の確定申告期限は、1月の延長の特例を受けて事業年度終了の日の翌日から3月以内というのが通例でした。そのため、法人税の確定申告期限に合わせて6月下旬に定時株主総会が集中したのだそうです。

そこで、2017年度税制改正では、会計監査を受けている会社の確定申告期限の延長については、次の通り改正を行いました。

会計監査人を置いている場合で、かつ、定款等の定めにより、今後、各事業年度終了の日の翌日から3月以内にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にある場合、4月を超えない範囲内で税務署長が申告期限の延長月数を指定

延長を受けたい月数は、「申告期限の延長の特例の申請書」に記載をします。

この改正により、従来6月末に定時株主総会を開催していた企業が、定時株主総会を7月に変更し、確定申告期限も2か月延長として7月末までにするといったことが可能になるのです。

【特例③】連結納税制度を採用している場合

連結納税制度とは、100%の連結完全支配関係がある法人を1つの法人とみなして法人税の確定申告を行う制度です。グループ内に赤字と黒字の会社がある場合、その赤字と黒字を相殺して法人税額を計算しますので、税額を引く抑えることが可能です。単体の法人での申告に比べて手数がかかりますので、2月までの申告期限の延長が可能です。

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3月決算法人であれば、本来の確定申告期限は5月31日ですが、延長申請をすることにより確定申告期限は7月末まで延長されます。

外国法人の場合

上記の場合以外にも、特別な事情がある場合、2か月以上の確定申告期限の延長を受けることが可能です。

例えば、外国法人が日本に支店を設けている場合、その日本の支店の決算は、その外国法人の株主総会等によって確定します。諸外国では決算日から定時株主総会開催日までの期間が4~5月程度となっているため、それに合わせた確定申告期限の延長が必要となります。

そこで、親会社の決算が確定しないことを理由に申告期限の延長の特例の申請を行うことで、2月以上の確定申告期限の延長が可能です。

災害があった場合

上記のほかにも、大地震などの災害があった場合や個別に災害の被害を受けた場合などについても、確定申告期限の延長が可能です。

確定申告期限の延長のメリットと注意点

確定申告期限の延長の特例を受けるには

法人税の確定申告期限の延長の特例を受けるためには、「申告期限の延長の特例の申請書」の提出が必要です。

提出期限は、最初に申告期限の延長を受けようとする事業年度終了の日まで(連結納税の場合、連結事業年度終了の日の翌日から45日以内)です。

ただ、これだけで安心しないでください。法人税だけではなく、住民税及び事業税についても、申告期限の延長の特例の申請をする必要があるので、ご注意ください。

法人税で申告期限の延長を行ったのに、住民税及び事業税の申請を忘れて、結局、原則の事業年度終了の日の翌月から2月以内に確定申告しなければならないということにならないよう、気を付けましょう。

法人税の納付は事業年度終了後2月以内に済ませよう

確定申告期限延長のメリットは、何よりも時間的な余裕ができることです。2か月以内に確定申告を終わられる必要はないのです。

ただし、以下の注意点があります。

確定申告期限までに法人税額を納付しないと、その不足分については利子税が課せられる

利子税とは、その名の通り、納付が遅くなることによる利息です。利子税を課せられないようにするためには、法人税額の確定額と同額か、それを上回る金額を本来の確定申告期限(事業年度終了の日の翌日以後2月以内)までに納付する必要があります。

なお、確定した税額が納付した金額よりも少ない場合には還付されますので、本来の確定申告期限までに税金計算が終わらない場合には、多めに納税しておくとよいでしょう。

税理士としても、3月決算のように確定申告が集中する時期には、確定申告期限の延長があるとありがたいものです。

明らかに赤字になる法人は2月以内に税額計算をする必要はありません。黒字が予定される法人についても、税額計算さえ2月以内に終わられておけば、残りの書類作成は残りの1月で作成すれば済むようになります。

まとめ

昨今、過労死問題、女性の社会進出などから、長時間労働を前提とした働き方を変えていこうという機運があります。

諸外国と比べて法人税の確定申告期限が短いことで、多くの経理担当者、会計事務所の職員が決算シーズンには連日のように残業をしています。

確定申告期限の延長が柔軟化されることで、多くの方の働き方が改善されるといいですね。

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【編集後記】

日曜日は、長女にとって2回目の水泳の大会でした。エントリーしたのは、個人メドレー100m、自由形50m、平泳ぎ50mの三種目。まだまだ水泳歴も短いのでタイムは後ろから数えたほうが早いのですが、飛び込みが上手になっていて驚きました。

【子育て日記】

昨日で長男は1歳4か月となりました。自己主張が強くなり、よく泣くようになりました。

  • 小6&小2の長女と二女が学校に行くときに一緒に外に出たくて号泣
  • パパ(私)が事務所に行くために家をこっそり出たら、それに気づいたらしく、玄関の前で5分ほど怒りながら号泣
  • 家族の誰かがお風呂に入っているのを発見すると、お風呂場の前で号泣
  • アンパンマンのDVDを止めると号泣

手がかかって大変ですが、これも成長の証ですね。

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※この記事は、投稿日現在の状況、法令に基づいて書いています。

また、ブログの内容等に関する質問は、受け付けておりませんのでご了承ください。

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