店舗や事務所を借りて敷金・礼金を支払ったときの会計・税務処理

2018年8月2日


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店舗や事務所を借りると敷金・礼金の支払いでまとまった金額を払わないといけません。

多額の支払いがあったので、さぞかし節税効果があるかと思いきや、実は支払った金額の全額が経費になるわけではありません。

敷金は経費になるのか?

敷金とは、借主が貸主に事前に預ける保証金です。

ですから、退去後に修繕が必要がなかったり、家賃の滞納がなかったりすれば、法的には戻ってくるはずのものです。

つまり、入居時に敷金を支払ったタイミングでは、預けているにすぎないので、基本的には経費にすることはできません

仕訳で表すと、以下の通りとなります。

(借方)敷金 1,000,000円 (貸方)現金及び預金 1,000,000円

敷金(または差入保証金)などの資産の科目で計上します。

そして、退去時に原状回復費用として300,000円差し引かれて残りの敷金が返還されたときに、差し引かれた金額を費用として計上することになります。

(借方)修繕費    300,000円 (貸方)敷金 1,000,000円

現金及び預金 700,000円

礼金は経費になるのか?

原則

礼金とは、敷金とは異なり、大家さんにお礼として支払うものということですので、返還されません。

ですから、礼金はその払った金額の全額を経費とすることができます。

しかし、支払ったタイミングでは、原則、経費にはできません(例外的に支払い時に経費にできる場合もありますが、それは後述します)。

テナントを借りている期間にわたって、徐々に経費にしていくのです。

例えば、賃貸借期間が契約上2年間ということであれば、礼金を支払うことによって2年間テナントを借りる権利を得たといえますので、2年間にわたって徐々に経費にしていきます。

礼金が24万円、契約期間が2年間だとすると、月々1万円を経費にすることとなります。

仕訳で表すと、次の通りです。

<礼金支払い時>

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(借方)長期前払費用 240,000円 (貸)現金及び預金 240,000円

※ 「長期前払費用」とは資産の科目です。1年を超えて費用を配分する必要があるときに使う科目です。

<月々の処理>

(借方)長期前払費用償却 10,000円 (貸方)長期前払費用 10,000円

※ 「長期前払費用償却」は費用の科目です。

月々処理するのが面倒という場合、決算時にまとめて以下の通りに処理してもよいでしょう。

例:契約開始日が9月の場合(決算期が12月と想定)

1年目

(借方)長期前払費用償却 40,000円 (貸方)長期前払費用 40,000円

※ 1万円×4月(9月~12月)=4万円

2年目

(借方)長期前払費用償却 120,000円 (貸方)長期前払費用 120,000円

※ 2万円×12月=8万円

3年目

(借方)長期前払費用償却 80,000円 (貸方)長期前払費用 80,000円

※ 1万円×8月(1月~8月)=8万円

支払い時に経費にすることが出来る場合

原則、賃貸借期間にわたって徐々に経費にしていくのですが、礼金の金額が20万円未満の場合には支払い時に経費にすることが出来ます

金額が少額であれば、税金の計算上も弊害がないということで、支払時に経費にすることが認められているのです。

仕訳は次のように行えばよいでしょう。

(借方)地代家賃 100,000円 (貸方)現金及び預金 100,000円

敷引きがある場合

敷金の中には、特約により、一部が返還不要となっている場合があります。

その場合には、礼金と同じ性質といえますから、上記の礼金と同じように処理することとなります。

仲介手数料

礼金、敷金と同じタイミングで支払うものとして仲介手数料があります。

この仲介手数料は、礼金のように賃貸借期間にわたって按分する必要はなく、支払ったタイミングで経費にすることが出来ます。

借主と貸主を仲介してくれたことによる不動産会社への手数料ですから、契約成立時に経費にできるのです。

消費税の処理(税抜処理の場合)

テナントであれば、支払う礼金には消費税が含まれています。

礼金の税抜き価格が240,000円であれば、消費税19,200円が上乗せされます。

この消費税は、賃貸期間にわたって按分する必要はなく、支払時に発生したものとして処理することになります。

仕訳で表すと次の通りです。

(借方)長期前払費用 240,000円 (貸方)現金及び預金 259,200円

仮払消費税   19,200円

まとめ

敷金・礼金の処理をまとめると、以下の通りです。

敷金は返還される予定の保証金であるため、経費にならない(退去時に修繕費などに充てられて返還されない金額がある場合には、その金額を経費にすることが可能)

礼金は賃貸借期間にわたって徐々に経費になる(20万円未満の場合には、支払時に経費にすることが可能)

間違えやすい処理なので、契約書をしっかりと読んで気を付けて入力しましょう。

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【編集後記】

本日は久々に新宿へ。

お客様が2店舗目をオープンしたので、往査を兼ねて足を運びました。

暑い日にもかかわらず、新宿は賑わっていますね。

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