【2018年度税制改正要望】広がるか!?自社株対価TOB

2017年9月6日


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経済産業省の平成30年度税制改正要望によると、経済産業省は、自社株を対価とした事業買収について、課税の繰延措置の創設を要望しています。この要望が実現した場合、自社株を対価とするTOBが今後広がるものと想定されます。

自社株対価TOBとは

自社株対価TOBの実施を阻む株式譲渡益課税

現在日本では、上場企業を買収するために行われる公開買い付け(TOB)については、その対価を現金として行われることがほとんどです。

TOBの際に売却に応じる株主としては、株式の売却により譲渡益が生じた場合には、その譲渡益に対して課税が生じます。

これは、TOBの対価が買収を行う会社の株式であった場合も同様です。

例えば、1株100円で購入した会社の株式に対してTOBがあり、1株につき株価300円の株式の割り当てがあった場合、

1株当たり、300円-100円=200円の譲渡益が生じたものとされ、この譲渡益に対して課税が行われます。

ただ、受け取ったのは株式であり、現金ではありません。すると、その納税資金を別途確保しなくてはなりません。

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(出典:「平成30年度税制改正に関する経済産業省要望【概要】」経済産業省)

つまり、納税資金を考慮すると、TOBの対価を株式で受け取った場合には、納税資金の資金繰りに苦慮する可能性があるため、現金であればTOBに賛成したはずの対象会社株主が、対価が株式であったためにTOBに反対するといった可能性が考えられるのです。

そのため、日本では自社株対価TOBはほとんど利用されることなく、大型買収案件の場合、数百億円から数千億円の買収資金を金融機関から現金を調達して実施されていました。

会社法上の問題点は解消済み

自社株TOBですが、以前は課税の問題以外にも下記の問題がありました。

  • 自社株対価TOBは買収会社の現物出資に該当し、検査役の調査が必要
  • TOB対価の自社株式にプレミアムを上乗せする場合、有利発行に該当し、株主総会の特別決議が必要

これらの問題点は、2011年の改正産活法により、認定を受けた事業者が認定を受けた計画に従って行う自社株対価TOBについては検査役の調査が不要とされ、一定の簡易要件を満たした場合には、有利発行に係る株主総会決議も不要とされました。

しかし、当時は税制上の手当てがなされなかったため、その後も自社株対価TOBは全く普及せず、今日に至っています。

TOBによるM&Aにおける使用対価の国際比較

経済産業省によると、日本ではTOB案件のほぼ100%が現金により行われており、諸外国と比較すると、対価の柔軟性が低いといえます。

2017-09-05 (1)

(出典:「平成30年度税制改正に関する経済産業省要望【概要】」経済産業省)

自社株対価TOBの課税の繰延措置

経済産業省が要望している自社株対価TOBの課税の繰延措置が実現した場合、自社株対価TOBの普及が進むと想定されます。

なお、課税の繰延べ措置とは、次の処理が認められるようになると想定されます。

(例)1株100円で購入したA社の株式に対してTOBがあり、1株につき株価300円のB社株式の割り当てがあった場合

A社株式の対価として受け取ったB社株式の取得価額は、A社株式の1株当たり100円というのを引き継ぎます。

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したがって、B社株式をその後400円で売却した場合、1株当たり400円-100円=300円を譲渡益として課税が行われることになります。

現行の税制の場合

現行の税制では、A社株式のTOBの対価としてB社株式を受け取った時点で、

1株当たり300円-100円=200円の譲渡益に対して課税されます。

そして、その後400円で売却した時には、

1株当たり400円-300円=100円の譲渡益に対して課税されます。

最終的にB社株式を売却してしまえばトータルの譲渡益は同じになりますが、今回の税制改正要望が実現した場合、B社株式を売却しない限りは課税が発生しませんので、自社株対価TOBに対する対象会社株主としては、TOBに応じやすくなることが予想されます。

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【編集後記】

昨日、独立後初めて健康診断を受けました。辛かったのは、バリウム検査。バリウムを飲むのが本当にしんどくて、しんどくて、めげそうになります。本当にバリウム検査ってやる必要があるのでしょうか…。帰宅後にネットサーフィンすると、医師の方はほとんどバリウム検査は受けないとか。。やらないでよいのなら やりたくない バリウム検査

【昨日の一日一新】

花と森の東京病院で健康診断

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