米国反トラスト法の概要及び独占禁止法違反に係る課徴金の税務処理の留意点

2017年10月16日


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先日、弁護士が主催する勉強会に参加しました。テーマは「自動車部品カルテルに見る米国反トラスト法のエンフォースメント」。価格カルテルがあった場合、日本の独占禁止法では企業に課徴金が課されますが、米国の反トラスト法では企業への課徴金だけではなく、関与した個人へも罰金及び禁固刑(10年以下)が課されるとのこと。米国での禁固刑…。考えただけでもゾッとしますね。私の専門外の部分ではありますが、テーマとしては興味深いものがあるため、ご紹介します。

米国反トラスト法とは

概要

自動車部品の原材料である資源の市場価格が値上がった時に競合他社と協議をし、歩調を合わせて値段を上げる、こういった行為はカルテルと呼ばれ、多くの国では独占禁止法により罰せられることになります。米国における独占禁止法にあたるものが反トラスト法であり、シャーマン法(1890年制定)、クレイトン法(1914年制定)、連邦取引委員会法(1914年制定)から構成されています。

反トラスト法の執行機関は、司法省反トラスト局(Antitrust division, Department of Justice)と連邦取引委員会(Federal Trade Commission)です。

反トラスト法による罰則は、以下のとおりです。

  • 法人:最高額1億ドルの罰金
  • 個人:罰金の最高額は100万ドル。禁固刑は最大10年

日本の独占禁止法違反の場合とは違い、個人にまで責任が及ぶこととなり、しかも、刑務所に収監されて最大10年の禁固刑という非常に重たい罰則となっています。現状、日本人が反トラスト法で受けている禁固刑の最長期間は2年とのことです。

執行状況

1990年代後半までは外国籍の役職員については収監されることがないという”No-jail”ポリシーがありましたが、2000年代に入るとそのポリシーは破棄され、外国籍の役職員に対しても積極的に禁固刑を科すようになりました。

今回の勉強会のテーマは自動車部品カルテルです。そうです、日本人に関してもこの対象となって収監されているという事例があるということです(「米国反トラスト法」で検索するとニュースが出てきます。)。

自動車部品業界では、2013年9月に日本の自動車部品メーカー8社とフランスの日本法人1社を加えた9社が米国で価格カルテルを結んで販売価格を不正に操作したということが、米司法省から発表されています。

捜査拡大とその背景

米国では反トラスト法により日本メーカーの摘発が増えています。その背景として挙げられるのが、米国が1993年に公表したリニエンシー・ポリシーやアムネスティ・プログラムという方針です。

最初に自主申告した会社は刑事責任等が免責され、二番目以降に申告したものも刑事責任が軽減されるというものです。

また、最初に自主申告して刑事責任を免れようとしたところ、実は二番目だったというとき、別の2つ目のカルテルを最初に自主申告すれば、2つ目のカルテルが免責されるとともに、1つ目のカルテルも減免されるという「アムネスティ・プラス」という制度もあります。これにより、芋づる式に操作が拡大していると言われています。1つ明るみになりそうなカルテルがあったら、もう1つカルテルをやっていないか必死に探すという状況が起こりそうです。

独占禁止法違反に係る課徴金の税務上の取扱い

日本での独占禁止法違反に係る課徴金の取扱い

日本で独占禁止法違反に係る課徴金を支払った場合、その課徴金の額は損金の額に算入されません。課徴金を100億円支払ったから、その30%相当額の30億円だけ法人税等の負担が軽くなったということが起きてしまいますと、その課徴金の効果が軽減されてしまいますので、課徴金については損金不算入となります。

外国での独占禁止法違反に係る課徴金の取扱い

平成21年度税制改正前は、外国で独占禁止法により課された課徴金は、刑事手続きを経たものは損金不算入、刑事手続きを経ないものは損金算入とされていました。つまり、外国で行政処分として課徴金を課された場合には、日本では損金算入が可能だったのです。

そこで、平成21年度税制改正にて外国政府が命ずるカルテル等違反の課徴金に対しては、損金不算入という取り扱いに改められたのです。

まとめ

米国の反トラスト法は積極的に域外適用をしているようです。日本でカルテルを行い、その対象商品がアメリカへ輸入されることになると、日本でのカルテルも米国の反トラスト法の適用対象とされてしまう可能性があるようです。そして、有罪となるとアメリカの刑務所へ収監されてしまう…。恐ろしいですね。会社のためと思って手を染めた不正が、個人にも降りかかってきて収監されてしまう…。

カルテルをする気がなくても、競合他社から「一緒に値上げましょう」と言われて、その場を繕うために「鋭意検討いたします」なんて答えたら、英訳した時にカルテルに同意したなんていうニュアンスになってしまうかもしれません。日本語と英語という言語、文化も違うので、その場は反論せずに繕うといった日本の企業文化が理解されずに有罪ということもありそうなので恐ろしい限りです。

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【編集後記】

コンタクトレンズをエアオプティクスアクアからアキュビューオアシスへ変えました。エアオプティクスアクアは汚れに強く丈夫だとか酸素透過率がどうだとかでコンタクトレンズ屋から薦められていて使っていたのですが、着け心地にとうとう耐えられなくなってしまいました。アキュビューオアシスに変えてみると、コンタクトしていることを忘れてしまうくらいの着け心地。コンタクトは装着感も大事ですね。

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【一日一新】

土曜日:K弁護士主催の勉強会に初参加

日曜日:Kindleでの読書をスタート

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また、ブログの内容等に関する質問は、受け付けておりませんのでご了承ください。

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