「税理士の仕事の92.5%は代替可能」に反論してみる

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geralt / Pixabay

日本経済新聞の昨日(2017年9月25日)の朝刊に「奪われる定型業務」という記事がありました。士業の定型業務は、AIにとってかわられる可能性が高いとのことです。2年前に野村総合研究所が英オックスフォード大学との共同研究によると、10~20年後に税理士の92.5%の業務がAIによる代替可能性が高いとのことです。

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そもそもこの共同研究の発表って正しいのか?

新聞記事では論拠が不明

こういう記事がでると、

「税理士の仕事の9割がなくなるんだってさ。税理士ヤバいじゃん。どうすんのよ、これから?」

と思われがちです。

ところで、税理士の仕事ってこの研究ではどう定義したのでしょうか。

どのような論拠で92.5%の業務がAIによる代替可能性が高いという結論になったのでしょうか。

この野村総合研究所と英オックスフォード大学の研究者は、税理士の仕事の中身をどの程度知っているのでしょうか。

特に、イギリスには国家資格としての税理士制度はなく、誰でも会計士や税理士の仕事をすることができます。英国勅許税務協会(The Chartered Institute Of Taxzation : CIOT)から資格を付与された「勅許税務アドバイザー」という存在がありますが、日本とはその役割や置かれた立場が大きく異なっていると言えるでしょう。税制もイギリスとはかなり違いますし。

税理士や公認会計士は定型的な業務が多く代替しやすい?

この研究を主導した野村総合研究所の主任コンサルタントの方は、下記のようにコメントしています。

定型的な業務が多く代替しやすい税理士、公認会計士などと、臨機応変の対応が不可欠で代替が難しい医師、看護師などに二極化

確定申告や会計監査というのは、法律に従った処理をすることであり、また、その仕事は事後的に行わわれるものなので、選択の余地は少なく定型的なものといういうことなのでしょう。

ただ、確定申告を正しく行うためには、お客様との密なコミュニケーションが必要であり、それが欠けていると正しい税務申告を行うのに必要な情報が入手できないことがあります。

会計監査も取引の実態がわからなければ、あるべき会計処理が分かりませんので、会社側との密なコミュニケーションは欠かせません。

税理士や会計士というものが必要な存在であるということには変わりないでしょう。ただし、AIにより効率化が図られ、必要な人員が減るということは起こり得るでしょう。

  • 会計ソフトへの入力(そもそも、これは本来、税理士の業務ではない)
  • 税務申告書の作成のための税務申告ソフトへの入力
  • 税法の条文、通達、判例などの調べものにかかる時間

といった業務は、今後、縮小していくことになるでしょう。会計ソフトへの入力をメインとしている旧来型の会計事務所モデルでは、いずれ人員削減に迫られることになるのではないかと危惧しています。

そのため、私は記帳代行を積極的には受けていませんし、人を採用して拡大していくのが会計事務所の成功モデルだとは思っていません。

ただ、このような定型業務も縮小はするものの、なくなりはしないでしょう。

  • 自社でAIを駆使して記帳をするよりも、会計事務所がAIを駆使して記帳してくれたほうが効率的
  • 自社の貴重な労働資源を記帳に費やしたくない
  • 社員に記帳させたくないが、社長が記帳に時間をとられるのは、時間がもったいない
  • 年1回の税務申告を自社でやるのは非効率

という風に考えれば、やはり、記帳代行型の会計事務所もまだまだ必要なはずです。その会計事務所がスタッフを減らして、AIを駆使して業務効率を上げていくという方向性は、ビジネスとしてありでしょう。

代替が難しい税理士の業務

税理士業務は代替しやすいといわれてしまっている税理士業務ですが、代替が難しい業務もあります。

税務コンサルティング

経営コンサルティングではなく、税務コンサルティングです。

経営コンサルティングは、資格がなくても誰でもできます。しかし、税務コンサルティングは税理士しかできません。独占業務ですので。

たまに、税理士でない方が「節税になるよ」とアドバイスをすることもあるようですが、玉石混交の情報ですので、妄信しないように注意しましょう。

すでに終わった取引については、税金対策が難しいことが多いのですが、事前にご相談いただければ、有効な節税アドバイスをすることができます。

  • お金を払うことなくできる節税(特別控除の利用など)
  • お金を払うことでの節税(保険など)
  • 税金がかかってしまう買収と税金のかからない買収
  • 税金のかかってしまう事業承継と税金のかからない(軽減される)事業承継

といったように、事前に対策をすることで無駄な税金を払うことのないようアドバイスをすることが可能です。

税務調査対応

個人であれ、法人であれ、事業を行っている場合には、数年に1度税務調査が入ることがあります(個人の場合はもっと可能性低いですが)。

税務調査は、脱税しているような怪しい会社にだけ入るわけではありません。

普通の会社や個人事業主にも任意の税務調査(任意と言っても断れませんが)を受けることがあり、顧問税理士がいなければ、会社の社長がすべて応対しなければなりません

調査官の仕事は、「申告漏れなどを見つけて、追徴課税をすること」です。

特に調査官が狙っているのは、不正がないかどうかです。不正を見つけた場合、その調査官の勤務評定が高まり出世に繋がりますから、彼らは必死で不正がないかどうかを探すのです。

売上が漏れていないか、プライベートな支出を経費に入れていないか、棚卸しを除外していないか、などを綿密に調査します。

調査前に、覆面でお客さんのフリをして来店していたり、取引先へ事情を聞きに行く反面調査を行ったり、様々なルートから情報を集め、追徴課税を狙っています。

そんな時にお役に立てるのが税理士です。違法な調査手法を用いていないか、単なるミスや間違いを不正と認定されてしまったりしないか(不正扱いだとペナルティの大きい重加算税が課され、ブラックリスト扱いになる)といったことでお役に立てます。

調査官との交渉についても、税理士に任せることができます。

顧問契約のある税理士であれば、その会社のことを熟知しているはずですから、必ずや心強い味方となることでしょう。

いずれにしろ安泰な職業はない

今回の職業では、税理士がやり玉にあがってしまいましたが、どんな職業であれ、安泰な職業はないものと覚悟したほうがよいと考えています。

私が大学生の頃までは、町の小規模な書店がたくさんありましたが、今や大規模な書店ばかりで、書店のない町も少なくありません。

ガソリンスタンドも燃費効率のよい車の誕生により需要が低下し、毎年たくさんのガソリンスタンドが閉鎖していっています。

営業の仕事はAIには代替できないと言われていますが、フルコミッション制の保険の営業の方は、商品が売れなければ全く報酬を手にできないわけですから、競争の激しさに辞めていく方がたくさんいます。

どんな仕事であれ、安泰な仕事などほとんどないのですから、その仕事についてからいかに生き残っていくか、必要とされる人材になるのかといったことが大切です。

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【編集後記】

「AIで税理士の仕事はヤバいよ」的な記事、見るたびに憤りを感じます。AIで奪われる仕事なんて、税理士以外にもたくさんあるだろうに…、なぜ税理士がやり玉にと思ってしまうのです。

代替可能性の低い職業に「研究者」というのが入っているのは、やはり、「研究者」が発表した研究結果だからでしょうか。

【昨日の一日一新】

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------※この記事は、投稿日現在の状況、法令に基づいて書いています。---------

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